コードという名の鎖 第2話「つながっている」 〜 占い依存・やめられない本当の理由 〜

「もしかして……これって私のことじゃない?」

相澤美沙はスマホを握りしめたまま、動けなかった。

昼休み。会社のロッカールームの片隅。

社長秘書の視線

今日も会議室の前で、社長秘書の田中さんと目が合った。

あの目線はいつも同じだ。何かを評価している。何かをジャッジしている。

美沙はその視線を浴びるたびに、胸の奥がざわっとする。

仕事上のミスはしていない。チェックリストも使っている。でも田中さんの前に立つたびに、自分が急に小さくなる気がする。

美沙はロッカールームに逃げ込み、スマホを取り出した。

通話履歴のトップには、いつもと同じ名前がある。

「涼子先生」

でも、今日は違った

指が動きかけたその瞬間、Amazonのアプリが目に入った。

先週ポチっておいた本。

大嶋信頼著『他人の意識が無意識に侵入してくる』

ページをスクロールした。

読み始めた瞬間、美沙の手が止まった。

本当のことが書いてあった

人の脳は、無線LANのようにつながっている。

急に不快なことを思い出してイライラするのは、自分が相手のことを思い出したからではない。

相手がこちらを思い出して、つながってきたから。

そして、知らないうちにミラーニューロンを通じて脳の中を支配されてしまうと、自分の感覚が自分のものではないと感じながらも、どうしたらいいのかわからなくなる。

これが「コード」の正体だ、と私は理解した。

見えない。触れない。でも確実に、張られている。

気づき

美沙はその文を、三回読んだ。

そういうことだったのか。

涼子先生が、私のことを思い出していた。

だから昼休み、あの声が聞こえた気がした。

幻聴じゃなかった。向こうから、つながってきていた。

コードは、電話していない時も、ずっとつながっている。

あの三日間の謎が解けた

美沙は考えた。

三日間、電話しなかった。あの三日間、何があったんだろう。

会社でのストレスは、いつもと同じようにあった。田中さんの視線も、相変わらずだった。でも特段、電話するほどのことではなかった。

じゃあなぜ、いつもは電話するんだろう。

ふと、思った。

もしかして——私が電話したい時って、向こうが暇な時じゃないか。

向こうが私のことを思い出した時に、私が「電話したい」と感じていたんじゃないか。

あの三日間は、涼子先生が忙しかったから。私のことを思い出す余裕がなかったから。だから私も、平和だった。

逃げなきゃ

美沙は、ゆっくりスマホを置いた。

恐ろしかった。

やめたい、じゃない。やめなきゃ、でもない。

体の奥から、言葉が出てきた。

逃げなきゃ。

そしてもう一つ、気づいたことがあった。

母の顔が、ふと浮かんだ。幼い頃の記憶。あの重さも——もしかして、コードだったのだろうか。

その問いは、まだ答えが出なかった。

でも美沙は初めて、思った。

切りたい。切れるはずだ。切るんだ。

でも、どうやって?

まだ……

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