六根清浄と高尾山|エンパスの耳が洗われた日

―コードという名の鎖・第10話―


あなたは最近、本当に静かな場所にいましたか? ノイズのない、ただ美しい音だけが響く場所に。


鳥たちの歓迎

「QUIQUIQUIQUI」——みんなみんなー

「ヒューヒューーほう。きゅっきゅっ」——美沙ちゃん来たよー

「ピチピチ ピピピピピピピピ」——ホントだー、美沙ちゃん うれしい

「キュイキュイ キュ~」——美沙ちゃん、こっちにいるよ ー見てー

「ビリリッリ、ビリリッリ」——どうして今まで来てくれなかったの

「ピッ、きゅるるる、ぴっ、きゅるるる」——寂しかったよ

「ビリリリー ビリリリー ぎゅるるる~ びぃビビビビビビ」——ほんとにさみしかったよ 美沙ちゃ〜ん

「ぎゅうイーユー ぎゅいーゆ ホイーゆ ほぃーゆ」——好き。特別好きなんだ。来てくれてありがとう

美沙の目に、涙が滲んだ。

ここは高尾山。美沙は久しぶりに訪れました。

1号路。舗装された道を歩きながら、道の脇に小さな滝がある。

またひとつ。さらにもうひとつ。

ミニ滝が3つ、川の音と重なって3重奏になっている。

ポコポコ、サーっ、ポコポコ。

同じリズムで刻み続ける。洗い流す音。

「今日は霧雨が気持ちがいい。」

いつもの会社の、ネガティブな独り言女たちの顔がよぎった。

思わず笑えた。

この山は、美しい声、喜びと愛で満ちている。

耳が、ゆっくり開いていく。


木の声を聞いた

しばらく登り、急なカーブに差し掛かったとき、拡声器の声が聞こえた。何か案内のよう。

すると、こんな声が聞こえた。

「拡声器の音やめて。私たち、人間の子供の声が好きなの。消さないで。」

「どの木かしら?」美沙は上を見る。

「あなたね。ごめんなさいね。」

美沙はその木に触れた。思いやりの手で。

木の厚い皮を通して、優しさが返ってくる。

「ありがとう。気がついてくれて。」

木は人間が木の声を受け止めると、敏感にわかる。

受け止めるとそれだけで喜ぶ。

人間だってそうよね。みんな気づいてほしい。

「助けてほしい」って言いたいの。でも言えない。

私もね。

外界は余りにも刺激がありすぎて、閉じるしかない。

またはネガティブ独り言とかね。

彼女たちも、助けてって言えないかわりに、みんなに聞こえることを承知でノイズを発生させる。

でも、ここは鳥の愛の音、小川の浄化の音、

木々と風の優しさのハーモニー。


神変堂と六根清浄の石車

浄心門をくぐると、すぐ左に神変堂があった。

朱色で「六根清浄」と彫られた石の柱。

その上に蓮の花。蓮の花から、黒光りする丸い玉が出ている。

柱の真ん中には、くるくると回る石車。

美沙はふと、昔のことを思い出した。

夏の暑い日だった。

はちまきをして、それぞれの手で印を作って。

山伏さんたちと一緒に、舗装されていない険しい山道を歩いた。

「懺悔懺悔、六根清浄。」唱えながら、ひたすら歩いた。

周りには、何かを変えたくて来た人たち。

しんどそうにしている人もいた。みんな、いろんなものを抱えながら来ていた。

滝行もした。

滝に入った瞬間、上から猛烈な勢いで水が降ってきた。

怖い、と思った。でもその瞬間、唱える言葉があることを思い出した。

唱えたら、すっと楽になった。

山伏さんの手が差し出され、安心して終わることができた。

体が軽くなっているのがわかった。

夜には般若心経を1000回唱えた。

一時間の瞑想もあった。

写経もした。

お肉なしのご飯がたくさん出た。

あの時は、六根清浄の意味が全然わからなかった。

でも今日、龍神さんが言ってくれた。

「君は昔、六根清浄って唱えながら山を登っていたから、その効果があるんだよ。

君ほど真剣に登った人はいないよ。」

その積み重ねが、今日の体に生きている。


六根清浄とは

六根清浄とは、眼・耳・鼻・舌・身・意——六つの感覚器官を清めること。

目で見たもの、耳で聞いたもの、鼻で嗅いだもの、舌で味わったもの、身体で感じたもの、そして心で判断したもの。日々の生活で汚れがたまったその全てを、ここで清らかにする。

さて、今に戻ると、美沙は玉の文字を見て笑ってしまった。

「耳」ではないか。

今日は、このために呼ばれたのね。

会社でのノイズを浄化する、浄化できるのね。

高尾山ありがとう。

石車をそっと回した。

「懺悔懺悔、六根清浄。」

3回唱えた。

体の中をスキャンするように意識を向けると、みぞおちの奥に黒い塊のようなものを感じた。

重い。その重さが取れたら、体がずっと楽になる気がした。取り出そう、と思った。

みぞおちの固まりがゆっくり動いた。

本当にゆっくり。右へ。上へ。肩へ。首の付け根へ。すっと抜けた。

胸が広がった。首が軽くなった。

頭が左右に、よく回り始めた。

おまけに目もスッキリした感じがある。

みぞおちの奥からあったかさがダイレクトに伝わってくる感じ。

自然と頭のてっぺんも天に向かって引っ張られているみたい。

「今、何を浄化したの?」 「わだかまり。」と、声が聞こえた。

姿勢がリセットされた美沙は再び唱えた。

「懺悔懺悔 六根清浄」

美沙の胃の奥の方から、何かがポンと出てきた。

抜いたよ。今度は天から浄化をオーダーした感じ。

思わず笑みが浮かんだ。

「はぁ~。これでひと息つける。」

「今、何を抜いたの?」

「下手。」「周りはできない。」

それは、美沙が周りに対して持っていた思い込みだった。

こんなに重くなるまでため込んでいたのね。

今までの職場、お稽古ごと、学生時代。

私もできなかったけど、周りもできないと思い込んで苦しんでいた。

周りに引きずられるのは、イヤ。

美しいものは美しい環境から生まれる。

スマートさはスマートな環境から生まれる。

私は美しい人、スマートな人にあこがれているの。

それを手放せば楽になれる?

しかも、エンパスにとって、環境は大切なの。

どこに身を置くかは生命にかかわるくらい大切。

美沙はよくミケランジェロの最後の審判の壁画を思い浮かべる。

「下の方に広がる地獄絵図はイヤ。上の方の神さまがいる世界に行きたいの。」

でも、さっき思い込みを既に出したの。

これから、美沙の周りは天界のようになるの?

いえ、そうなるんです。

美沙は言葉のニュアンスを変え、キッパリと天国になると言い、胸をトンと叩いた。

ずっと胃の中に溜めてたものが無くなり、軽く、ふぁーって広がった感じがした。


山からのメッセージ

急な階段を上がり、茶屋の近くに来た。

鳥が鳴いた。さっきより、声が響き渡る。

「ギューイーユー ギュイーユ ホイーユ ホイーユ」——祝福されてる気がした。

思い込みが外れたこのタイミングで、迎えてくれてる。

耳が洗われて、鳥の鳴き声がさらに胸に響いている。

六根清浄、聴覚の根本から清められた。

そして立ち止まって木々を見ていると、こんな声が目の前の木々から届いた。

「大切なことよ、ここには下手なコードが届かない。」

そして、さらに深いところから、言葉がふわりと届いた。

「タイトル。メッセージ。」

山からの言葉だった。

御本社にて、またしても「耳」の石碑があった。

「メッセージをちょうだい」

「耳が完璧に洗われてる。」

「よかったー。」


ここには下手なコードが届かない

下界では毎日、コードを切ることを意識して、エネルギーを使っている。

しかし、ここでは、何もしなくていい。

鳥が、川が、木が、山が全部やってくれる。

エンパスにとってここは楽園。

本来、地球はこうだったんだ。

エンパスをコントロールして、閉じたり開いたりすることをアドバイスされたことがあった。

しかし、アドバイスした人はエンパスじゃない。

美沙の耳は、木や鳥や山の発する声をキャッチするもの。

豊かな耳。地球の豊かさを享受する耳。

美沙だけではない。

人は本来、自然と共に生き、愛や豊かさを享受することができるもの。

あなたもね。

耳が洗われた日、私は初めて気づいた。

ノイズは外から来るんじゃない。溜め込んでいた私が、作り出していた。

でも、ここでは何もしなくていい。山が、全部やってくれる。

👉 第9話を読む「犬みたいにブルブルした日」


【この話のまとめ】

高尾山で美沙の耳が洗われた日の記録。六根清浄の石車を回し、みぞおちに溜まっていた「わだかまり」と「周りはできない」という思い込みを手放した。山からのメッセージは「ここには下手なコードが届かない」——エンパスが本来いるべき場所は、自然の中にある。ノイズは外から来るのではなく、自分が溜め込むことで生まれる。手放せば、山が全部やってくれる。


高尾山・神変堂ガイド

高尾山(たかおさん) 東京都八王子市高尾町2177 標高599m。都心から約1時間。世界で最も登山者が多い山のひとつ。薬王院を中心とした真言宗智山派の霊場であり、修験道の聖地。ミシュラングリーンガイドで三つ星を獲得。四季折々の自然と、龍神・天狗信仰が息づく場所。

神変堂(じんべんどう) 浄心門をくぐってすぐ左に位置する小堂。修験道の開祖・役行者(えんのぎょうじゃ)を祀る。六根清浄の石柱と石車があり、参拝者が石車を回しながら「懺悔懺悔、六根清浄」と唱える場所として知られる。

アクセス 京王線「高尾山口駅」より徒歩すぐ。新宿から約50分。1号路(表参道コース)は舗装された道で歩きやすく、初心者にもおすすめ。


コードを切りたい方、ノイズを消したい方、ai美のセッションへどうぞ。 → aimi-8888.com

あなたの魂は、最初から美しい。ai美はそれを知っています。


\ 最新情報をチェック /