人を褒めると自分に返ってくるのは、先に見つけた人が、見つけ返してもらえるからである。
しかも、褒め言葉は相手の心と脳に残り、褒めた側が思うより深く届いている。
そして、返ってくるのは褒めた相手からとは限らない。親切は、人から人へ巡ることがある。

雨上がりの電車の中で、隣り合って座り、語らう二人の女性

「あなたもよ。きれい。人って、内面が滲み出るじゃない」

電車で、たまたま私の隣に座ってきた女性から、私はそう言われた。私が、彼女の美しさを心から褒めた、すぐあとのことである。

人を褒めると、自分に返ってくる。そんな話を、聞いたことはないだろうか。それは本当なのか。それとも、ただのきれいごとなのか。

そもそも、日本人には、褒め言葉が少ない気がする。実際、1985年にバーンランドと荒木が行った日米の比較調査では、アメリカ人が平均1.6日に一度、人を褒めていたのに対して、日本人は13日に一度だった。

しかも、日本人は、褒められても「いえいえ」「そんなことない」と打ち消すことが多かった。40年ほど前の、限られた人数への調査である。それでも、私の実感とよく重なる。

人を褒めると自分に返ってくる、三つの理由

褒め言葉は、相手を持ち上げるものではない。その人の美しさを見つけて贈る、言葉のプレゼントである。そのプレゼントが自分に返ってくる理由は、三つある。

  • 先に見つけた人は、見つけ返してもらえる
    人は、好意を受け取ると、お返しをしたくなる。これを「返報性」という。
  • 褒め言葉は、相手の心と脳に残る
    人から良い評価を受けると、お金をもらった時と同じ、報酬に関わる脳の部位が働く。
  • 思うより深く、届いている
    褒めた側は、相手の喜びを、実際より小さく見積もりやすいことが分かっている。

ある雨上がりの午前、私は二人の人に会った

私は、ずっと人のいいところを褒めてきた。一人の生きる人間として、他人の欠点をとやかく言う必要はないと思っているからだ。それよりも、その人が持っている良さを、ちゃんと教えてあげたい。

本人がその良さに気づいているかどうかは、分からない。だからこそ、言葉にして伝える。それが、人として正しい姿だと思ってきた。

褒めると、その人が喜ぶ。そして、その喜びが私に伝わって、私も嬉しくなる。

そんな私が、ある雨上がりの午前、二人の人に会った。

1か月遅れの勉強会で

その日、私は、会社から行くように言われた勉強会に、1か月遅れで出かけた。私のミスで、すっかり忘れていたのだ。

ところが、隣の席の男性も、同じく1か月遅れで来た人だった。その方は、大きな目をさらに大きくして、私を見ながら話を聞いてくれた。

自分の意見を話す時には、一歩引いて、遠くを見るような目をする人だった。話が盛り上がり、私が「陽気な方で、いいですね」と言うと、その方は「あなたもね」と返してくれた。

そして、最後の最後に、その方が亡き大親友・峻(しゅん)くんの知り合いだとわかった。私たちは驚き、そして、しみじみとした。二人の中には、峻くんとの思い出が、たくさんあったからだ。峻くんが、私とその男性を引き合わせたのだと思った。

帰りの電車で

帰りの電車では、たまたま、私の隣に座ってきたロシア人の女性と話をした。「とんでもないです」と、丁寧な日本語を使う人だった。声はまろやかで、高すぎも低すぎもしない。

終始ほほ笑みながら、私の話をきちんと聞いてくれた。メイクは自然で丁寧で、暮らしの余裕が伝わってきた。心も体も大切にして生きている、きれいな人だった。

私は、その美しさを見つけて、言葉にした。すると今度は、彼女が、私の内面の美しさを見つけてくれた。

「あなたもよ。きれい。人って、内面が滲み出るじゃない。あなたって、内面が滲み出る雰囲気よ」

カフェで、降りてきた言葉

雨の日のカフェで、カップを手に、窓の外を見つめる女性

そのあと、私はカフェに入った。そこで、ふと、こんなメッセージが降りてきたと感じた。

「あなたが、今までどれだけいろんな人に魔法の言葉をかけてきたか、わかる? それが返ってきているんだよ」

二つの出会いをつなぐ答えを、私は受け取ったのだと思う。

この日の出来事は、noteで物語として書いています。

勉強会の出会いは第1話、電車とカフェの出会いは第2話です。

では、この「返ってくる」という感覚を、研究はどこまで説明できるのだろうか。

心理学:先に見つけたから、見つけてもらえたのか

先に見つけた人は、見つけ返してもらえる

人は、好意を受け取ると、お返しをしたくなる。これを「返報性」と呼ぶ。社会学者のグールドナーは、1960年に、これを「受けた恩には報いるべきだ」という、社会に広くある決まりごととして整理した。

あの日の二つの出会いは、まさに返報性だった。勉強会の男性には、私が先に「陽気な方で、いいですね」と言った。電車の彼女にも、私が先に、その美しさを伝えた。向こうから先に褒められたわけではない。私が先に見つけたから、見つけ返してもらえたのである。

ひとことで言えば、「先に見つけた人は、見つけ返してもらえる」ということだ。これが、一つ目の答えである。

良さを語る人は、良く見える

さらに、もう一つ、面白い研究がある。1998年、アメリカの心理学者スコウロンスキーらは、「自発的特性転移」と呼ばれる現象を報告した。人は、誰かの性質を語る人を見ると、語られたその性質を、語った本人にも重ねて見てしまう、というものだ。

誰かを「誠実な人だ」と話す人は、誠実な人に見えやすい。反対に、誰かの悪口を言う人は、その悪い性質で見られやすくなる。しかも、聞き手は、それを意識せずに行っている。

あの日、私は、彼女の美しさを言葉にした。すると、彼女は、私の中に美しさを見つけてくれた。美しさを語った私が、美しいと言われたのである。

この研究は、あの場面と、不思議なほど重なる。そして、人の欠点ではなく、良さを語ってきたことの意味も、そっと教えてくれる気がする。

返報性だけでは、収まらないこと

ただ、あの日は、返報性だけでは収まらないこともあった。

まず、彼女の言葉は、お返しの域を超えていた。私が伝えたのは、彼女の外見の美しさと生き方だった。すると彼女は、私の内面の美しさを見つけてくれた。

さらに、「結婚しているかどうかは関係ない。自分の世界があるかどうかだと思う」と、自分の考えまで渡してくれたのだ。

そして、勉強会の男性との出会いで、私がいちばん大きく受け取ったのは、褒め言葉ではなかった。峻くんとのつながりだった。それは、お返しでは説明できない。この部分は、後半のユングの章で考える。

返ってくるのは、褒めた相手からとは限らない

実は、返報性には、もう一つの形がある。「間接互恵」と呼ばれるものだ。親切が、親切にした相手からではなく、別の誰かから返ってくる仕組みである。これには、大きく分けて二つの型がある。

一つ目:「評判」の型

二度と会わない人に親切にしても、その人から何かが返ってくることはない。損をするだけのようにも見える。それなのに、なぜ人は、見知らぬ人に親切にするのだろうか。

1998年、数理生物学者のノヴァクとシグムントは、この謎を、コンピュータの中で確かめた。本物の人ではない。ゲームの登場人物のように、決まったルールで動く「仮想の人」を、プログラムでたくさん作ったのだ。

そして、出会った相手を助けるか助けないかを、何度も選ばせた。それぞれの人には、「あの人は、よく人を助けている」という評判がついていく。そして、人々は、評判の良い人を、助けるようになった。

その結果、親切な人は、損をして消えていくどころか、生き残った。助けた相手とは別の誰かが、評判を見て、助けてくれたからである。

つまり、親切は、評判という形で周りに伝わり、別の人から返ってくる。「あの人は、いい人だよ」という口コミで、お客さんが増えるお店に、少し似ている。

二つ目:「恩送り」の型

親切にされた人が、その相手にではなく、別の誰かに親切を渡していく。日本語の「恩送り」という言葉そのものである。2007年、ノヴァクとロックは、この型を理論で検討し、それを支えているのは「感謝」の気持ちではないかと論じた。

そして、恩送りに近いことが、実験の中で起きることを示した研究もある。2010年、ファウラーとクリスタキスは、初対面の人どうしが、お金を出し合うゲームを何度も行う実験を分析した。相手を入れ替えながら進めたところ、気前よく振る舞われた人は、次の回で、別の相手に気前よく振る舞った。

そして、その気前の良さは、さらにその先の人へと伝わっていった。人から人へ、そのまた先の人へと、三人先まで広がったのである。最初の一人が多く出した分は、実験の終わりまでに、周りの人たちによって、およそ三倍に増えていた。

つまり、親切は、渡した相手のところで終わるとは限らない。人から人へ巡りながら、広がっていくことがある。

まわりの人たちに笑顔を向け、言葉を交わす女性

ここからは、私の読みである。私が、これまで褒めてきたたくさんの人たち。その人たちから、別の誰かへ。そして、また別の誰かへ。あの日の二人が、その巡りの中にいたのかどうかは、分からない。しかし、カフェで受け取った「それが返ってきているんだよ」という言葉は、この恩送りの姿と、よく似ている気がする。

では、褒め言葉を受け取った時、人の中では、何が起きているのだろうか。

脳科学:褒め言葉は、脳に何を起こすのか

褒められることは、脳にとって「報酬」になる

2008年、生理学研究所の出馬圭世(いずま・けいせ)さんたちは、褒められることが、脳にとって何なのかを調べた。fMRI(脳の血流を測る装置)を使い、19人の脳の働きを見たのである。

その結果、他人から良い評価を受けた時、脳の「線条体」という、報酬に関わる部位が働いた。しかも、それは、お金をもらった時に働く場所と重なっていた。

つまり、人から良く評価されること、いわば褒められることは、脳にとって、お金と同じように報酬として扱われていた。

褒め言葉は、翌日の上達も助ける

さらに、2012年には、同じ研究所の菅原翔さんたちが、褒め言葉が、練習した技の定着を助けることを報告した。指で決まった順番にキーを打つ練習をしたあと、自分の出来を褒められた人は、褒められなかった人より、翌日、より上手にできるようになっていた。

だから、褒め言葉は、言われたその場で消えるものではない。受け取った人の心と脳に残り、その人を、前へ進ませる。

では、褒めた側は、その大きさに気づいているのだろうか。

心理学:褒めることは、自己満足なのか

褒められた人は、予想よりずっと喜んでいた

アメリカの心理学者、ブースビーとボーンズは、2021年に、5つの実験の結果を報告した。

ある実験では、大学生に、キャンパスで見知らぬ人に声をかけ、「そのシャツ、いいですね」のように、短く褒めてもらった。その前に、褒める側は、「相手はどのくらい喜ぶか」「どのくらい迷惑そうにするか」を予想した。

結果は、予想と大きく違った。褒められた人は、褒めた側の予想よりずっと喜んでいた。しかも、気まずさや迷惑さは、予想よりずっと小さかった。

おもしろいのは、その場にいない第三者に予想させると、ほぼ正確に当てたことだ。つまり、自分が褒める側に立つと、相手の気持ちの見積もりが、小さくずれやすい。そして、褒めた側も、褒めたあとには、気分が良くなっていた。

見知らぬ人と話すと、通勤が快適になる

見知らぬ人に話しかけることについても、面白い研究がある。エプリーとシュローダーが2014年に行った研究では、通勤中に見知らぬ人と話した人は、黙って過ごした人より、通勤が快適だったと答えた。しかも、話しかけられた側も、同じように良い体験をしていた。

ひとことで言えば、「あなたの言葉は、あなたが思うより深く、相手に届いている」ということだ。

だから、褒めることは、自己満足ではない。届いていないように見えるのは、届いた大きさを、自分で小さく数えてしまうからかもしれない。

私も、褒めると相手の喜びが伝わってきて、嬉しくなっていた。研究の結果は、この実感と重なっていた。

ここから先は、私の実感である。研究では確かめられていない。人の良さを見つけようとしていると、自分の目に映る世界も、少しずつ明るくなっていく気がする。そして、そういう目で生きている人同士は、どこかで見つけ合うのではないかと感じている。

もちろん、褒めれば必ず好かれる、という話ではない。受け取られ方は、相手や状況、本心から出た言葉かどうかで変わる。

では、研究では説明のつかない出会いは、どう受け取ればよいのだろうか。

ユング心理学:あの偶然は、私に何を知らせたのか

1か月遅れの勉強会で、同じく遅れてきた人が隣に座り、その人が亡き親友とつながっていた。私は、峻くんが会わせてくれたのだと感じた。

シンクロニシティ(共時性)とは

ユングは、このような偶然を「シンクロニシティ(共時性)」と呼んだ。原因と結果では説明できないけれど、本人にとって強い意味をもって現れる一致、という考え方である。1952年に、論文として発表している。

大切なことがある。シンクロニシティは、科学的に証明された現象ではない。そのため、「会わせてくれた」ことも、客観的な事実として証明はできない。

それでも、私は、ユングのこの考え方を、偶然の原因を突き止めるためではなく、「その偶然が、今の自分に何を知らせているのか」を受け取るためのものとして、大切にしている。

つまり、その偶然が本当に仕組まれたものかは、証明できない。しかし、その偶然が自分に何を伝えているかは、受け取ることができる。

私は、あの偶然をこう読んだ

峻くんは、明るいふりではなく、心の底から明るい人だった。そして、あの男性も、同じ匂いのする人だった。私と、峻くんと、あの男性。

同じ仲間だから、会うべくして出会ったのだと思う。1か月遅れというタイミングさえも、人知を超えた何かによって計られていた。私には、そう感じられた。

スピリチュアル:魔法の言葉が返ってきた日

帰りに入ったカフェで、降りてきたメッセージ。その全文は、こうだった。

「あなたが、今までどれだけいろんな人に魔法の言葉をかけてきたか、わかる? どれだけの人を幸せにしてきたか、わかる? それが返ってきているんだよ。みんな、充分に幸せにしてもらってきた。満ち足りた。だから、返ってきているんだよ」

胸が、ぐっと熱くなった。心の奥から、涙があふれてくる感じ。目が赤くなり、涙がすっと落ちた。私にとっては、いつものことである。私は、鼻をかみながら、しばらくカフェの席に座っていた。

これは、研究ではない。宇宙の法則だと言うつもりもない。私が、そう受け取った、というだけのことだ。

徳を積むためではなかった

よく「徳を積む」と言う。徳を積むために、ごみ拾いをする人もいる。昔の私も、そうだった。もちろん、それも良いことだ。良いことは、良い。

しかし、私が人を褒めてきたのは、徳を積むためではなかった。何かを得ようとして、褒めてきたわけではない。人の良さを伝えることは、私にとって、人として生きることと同じ、当たり前のことだった。

その当たり前に贈ってきた言葉が、いつのまにか満ちて、あふれて、こぼれてきた。あの日は、そんな記念日のように感じた。

道元の「愛語」

約800年前、禅の道元も、言葉の力について書き残している。『正法眼蔵』の「菩提薩埵四摂法(ぼだいさったししょうぼう)」の巻で、人を導く四つの行いとして、布施、愛語、利行、同事を挙げた。愛語とは、慈しみの心から出る、やさしい言葉のことである。

その中で、道元は「徳あるはほむべし」と書いている。良いところのある人は、褒めなさい、という意味だ。さらに、こう続ける。

「むかひて愛語をきくは、おもてをよろこばしめ、こころをたのしくす。むかはずして愛語をきくは、肝に銘じ魂に銘ず」

面と向かってやさしい言葉を聞けば、顔がほころび、心が楽しくなる。人づてに聞けば、肝に銘じ、魂に刻まれる。そして道元は、愛語には、天をめぐらすほどの力があることを学びなさい、と結んでいる。

布施と愛語が、同じ四つの行いに並んでいる。私には、それが「褒め言葉は、言葉で渡すプレゼント」という感覚と、重なって見えた。

科学(研究)、理論(ユング)、スピリチュアル(体験)は、確かめ方が違う。私は、それを混ぜずに、並べておきたい。

実は、前日の私は落ちていた

ここまで書いてこなかったことがある。あの雨上がりの午前の前日、私は、久しぶりにそこそこ落ち込んでいた。そのため、前日のうちに、瞑想をしてクリアリングをしていた。

実は、私には、以前から不思議に思っていることがあった。嫌なことを言われて、気分が落ちている時ほど、なぜか、人の良さがよく見える。意識して探しているわけではない。自然に、目に入ってくる。

私は、相手にネガティブなことは言わない。見えた良さを、そのまま伝える。すると、相手の喜びが、ぱっと私の中に入ってきて、気持ちが一気に明るくなる。しかも、そういう日は、一人では終わらない。二人、三人と、思わず良さを伝えたくなる人が現れる。

落ちている日の親切は、気分を支える

この実感に近い研究がある。ラポサらが2016年に報告した研究では、77人に2週間、毎日の出来事と気分を記録してもらった。その結果、人に親切にした日は、ストレスのある日でも、気分の落ち込みが和らいでいた。

2024年には、800人を超える人の日常を記録した研究も報告された。人を手助けしたあとは、気分が良くなっていた。しかも、その効果は、手助けの前に気分が落ちていた人ほど大きかった。

ただし、手間や負担の大きい手助けは、その前後のストレスの高さとも結びついていた。無理をしてまで、誰かのために動く必要はない。私の場合も、努力して探したのではなく、自然に目に入った良さを伝えていただけだった。

ひとことで言えば、「落ちている時に、ふと目に入った良さを贈ることは、贈る人自身の支えにもなりうる」ということだ。

ここからは、私の読みである。落ちた翌日だったからこそ、私の目には、あの二人の良さが、いつもよりよく見えていたのかもしれない。そして、見えた良さを贈ったら、今度は私が見つけてもらった。あの日は、そういう一日だったのだと思う。

ai美は、どんなふうに褒めているのか

特別な技術は、ない。私が褒めているのは、だいたい三つだ。

ai美が褒めている三つのこと

  • 見たままの外見
    「足が長いですね」「髪がツヤツヤですね」。目に入ったものを、そのまま言葉にする。外見は、いちばん言いやすい良さである。
  • その人が頑張っていること
    たとえば、頑張って売り上げが上がった人には、やはり、そのことを伝える。
  • その人の性格

そして、どの時も、欠点には触れない。見えた良さを、そのまま伝えるだけだ。本人がその良さに気づいているかどうかは、関係ない。気づいていないなら、なおさら、教えてあげたい。

まとめ:見つける人は、見つけられる

午前の街を、前を向いて歩く女性

この記事のまとめ

  • 先に見つけた人は、見つけ返してもらえる。これは、返報性という心理で説明できる。ただし、保証ではない。
  • 親切は、渡した相手から返ってくるとは限らず、人から人へ巡って広がることがある。
  • 人から良い評価を受けることは、脳にとって、報酬として働く。
  • 褒めた側は、その喜びを小さく見積もりやすいことが、心理学の研究で示されている。
  • 意味のある偶然は、仕組まれたことを証明できるものではない。しかし、それが自分に何を伝えているかは、受け取ることができる。
  • 私は、あの日を「魔法の言葉が返ってきた日」と受け取った。

人を褒めることは、相手を持ち上げることではない。その人の中にある美しさを見つけて、言葉にして贈ることである。

「褒めれば必ず返ってくる」とは、私は言わない。それでも、見つける人は、思いがけない場所で、自分も見つけてもらうことがある。あの日の私が、そうだった。

もし、あなたが、誰にも見てもらえないと感じているなら、それは、あなたの言葉が届いていないからではない。あなたが贈ってきた言葉は、あなたが思うより深く、誰かの中に残っている。そして、あなたを見つける人とは、まだ出会っていないだけなのかもしれない。

無理に探さなくて大丈夫。気分が落ちている日も、そうでない日も、ふと誰かの良さが目に入ったら、それを一言、贈ってみてほしい。届いた大きさは、あなたが思うより、きっと大きい。そして、その喜びは、あなたの中にも入ってくる。

よくある質問

Q. 人を褒めるのは、自己満足?

いいえ。研究では、褒められた側の喜びは、褒めた側が予想するより大きいと報告されている。届いていないように感じるのは、届いた大きさを、自分で小さく見積もってしまうからかもしれない。

Q. 日本人は、なぜ褒め言葉が少ない?

1985年の日米比較の調査では、日本人はアメリカ人より、人を褒める回数がずっと少ないという結果が出ている。

さらに、日本人は、褒められても打ち消すことが多いことも分かった。褒めにくく、受け取りにくい。その両方があるのかもしれない(これは私の読みである)。

Q. 褒めれば、必ず自分に返ってくる?

必ず、とは言えない。返報性という心理はあるが、同じ人から、同じ形で返ってくる保証はない。ただ、思いがけない場所で、自分も誰かに見つけてもらうことはある。

Q. 知らない人に褒められたのは、何かのサイン?

研究で確かめることは、できない。しかし、ユングの考え方を借りれば、それが本当にサインかどうかより、その言葉が今のあなたに何を伝えているかを受け取ることが大切だ。

私は、電車で言われた言葉を、「見つけてもらえた」というしるしとして受け取った。「内面は外見に滲み出るって、本当のことだったんだ。あなたもそうだよ。自信を持って」と、この女性を通じて、大きな存在が伝えてきたと感じたのである。

Q. 褒めると、運気は上がる?

運気は、研究では測れない。そのため、上がるとは言えない。ただ、褒めた側の気分が良くなることや、人に親切にした日は、ストレスによる気分の落ち込みが和らぐことは、研究で報告されている。

Q. 落ち込んでいる時に、人を褒めても大丈夫?

無理のない範囲なら、気分の支えになることがある。人に親切にした日は、ストレスがあっても気分の落ち込みが和らいでいた、という研究がある。

ただし、負担の大きい手助けは、ストレスの高さとも結びついていた。ふと目に入った良さを、一言贈るくらいで十分だ。つらい日は、まず休んでほしい。休むべき時は、休んでいい。


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参考文献・出典

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