コードという名の鎖 第3話「切れないコード」〜占い依存、やめられない本当の理由〜
悪魔のようなツール
午後9時。夜道。
「今日は電話しない。今日は電話しない。今日は電話しない。」
口の中でブツブツ言いながら、美沙は歩いた。
賢くなったから、早く帰らないようにしていた。家に帰ると、かけてしまうから。でも帰り道でかけてしまう時もあった。
携帯電話なんて、誰が発明したんだ。悪魔のようなツール。
家のドアを開けた。バッグを置いた。
深呼吸。いや、ため息に近い。
ガマン。深呼吸。
お願い、電話させて。神さま。許してください。
静かな声が聞こえた気がした。
好きにするが良い。
良かった。助かった。
でも——神さま、あきらめてる?どうして?
葛藤のまま、気づいたら手が動いていた。このために携帯電話はあるのよ、と思いながら。
先客はいなかった
呼び出し音が鳴った。すぐつながった。
先客はいなかった。涼子先生は、私を待っていた。
電話がつながった瞬間、何かが緩んだ。あの声だ。
しゃべっている間、意識がどこかに飛んでいく。
これが快楽なんだろうか。
身体だけがそこにある。感覚が薄くなる。痛みも、不安も、社長秘書の視線も、全部遠くなる。
時計が気になった。でも見られなかった。
正確には——見たくなかった。ここで終わってしまうのが、怖かったから。
しばらくして、涼子先生が言った。
「美沙さん、休みますか?」
「……はい。」
人生を、棒に振っている
電話が切れた。
スッキリしていた。後悔もなかった。
ただ——全部終わったような気がした。人生を、棒に振っている。
脳裏に通帳がよぎった。見ない。
どのくらい、この生活が続くの?続けられるの?
パチンコにはまる人は、こんな感じなんだろうか。麻薬は。買い物は。やめたいのに、やめられない。苦しいことから逃げるために始めたのに、これ自体が苦しくなっている。
根本の苦しみを消さない限り、何も変わらない。
アファメーションをしても。自分はラッキーだと言っても。何も変わらなかった。
微かな期待
神さま、助けて。
今日の昼間に注文しておいた本がある。
大嶋信頼先生の本だった。
「これから良くなるわよ」——何度この言葉に騙されてきただろう。
でも、この本は。今までにない切り口だと思った。
微かな期待を胸に、眠った。
紳士的な本
本が届いた。
手に取った瞬間、感じた。
紳士的な本だ。
飾っていない。抽象理論を並べ立てるものでもない。空論でもない。真っ当な本。確かな実がある。
そんな気がした。
毎日読んだ。何度も読んだ。
私のことを、なんでこんなにわかってくれるんだろう。
私の苦しみ。人間関係の悩み。悩みの根本原因。
理屈でわかった気がした。
3年間は
コードを切る。つけられてたまるか。
ただ、そんな思いだった。
3年間、電話しなかった。
普通の人だった。楽しかった。楽だった。
3年間は。
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