靖国神社で起きたこと——祈りの純度が、届く場所を変える

その朝、みさちゃんは声が聞こえた気がした。

来て。桜、見に来て。
おにぎり、持ってきて。梅干しのね。

遠慮がちな、遠くから聞こえるような声。でも気のせいのような気もする。

みさちゃんはそういうことが、たまにある。

今日はアルノおじいちゃんに会えそうな気がする。
だから、お母さんに梅干しのおにぎりを頼んだ。お母さんのおにぎりは美味しい。真っ赤な梅干しがつぶれていて、めちゃくちゃ酸っぱいの。ご飯は水分多めでしっかり握ってくれる。
それをオレンジ色のリュックに入れて、靖国さんへ向かった。


境内には、人が溢れていた。
花見客、参拝客、外国人のグループ。みんな空を見上げて、スマホを向けて、笑っていた。桜は満開だった。白に近いピンクで、曇り空の白と混じって、ふわっと輝いている。社殿の濃い木柱の色の下で、その柔らかさだけが浮かび上がるようだった。
みさちゃんは人の流れに逆らわず、でも少しだけ違う方向へ歩いた。一本一本に物語が刻み込まれた桜が奥にいざなう。奥へ。もっと奥へ。うれしそうに咲く桜の木を眺めながら進む。
着いた。神池庭園。
アルノおじいちゃん、やっぱりいた。池のそばのベンチに座っていた。白い髪、白いひげ、大きな体。でもこの庭園の空気に、すっと馴染んでいる。木が生えているみたいに、ずっとそこにいたみたいに。
みさちゃんが隣に座ると、おじいちゃんは何も言わず、少しだけ目を細めた。アルノおじいちゃんと何も言わずに庭園を眺める。やわらかくすべてが一体化したような景色。さっきまでの賑わいも、嘘みたいに消えている。小さな滝の音だけが聞こえる。やわらかい音だ。穏やかで、まるで心臓の鼓動と調和しているよう。
池には錦鯉がゆっくりと泳いでいて、桜の花びらが水面に落ちるたびに、小さな波紋が広がった。いつもこの場所は、少し霞んで見える。胸の奥から声がする。「守られているの。本当に大切なものは、隠されているの。」


みさちゃんは、気づいた。
いる。たくさん、いる。
英霊さんたちは、池の周りにふわりと集まっていた。キラキラ光っている。桜の光と混じって、どこからが花でどこからが魂かわからないくらい。みんなお兄さんみたいにやさしい顔で、みさちゃんを見てニッコニコだ。怖くない。ぜんぜん怖くない。むしろ、遊んでくれそう。
みさちゃんはリュックを開けた。
するとひとりが、すっと手を伸ばしてきた。梅干しのおにぎりが、ふわっと光の中に溶けていく。その顔がほころんだ。それを見てみんなも笑った。みさちゃんも笑った。
残りのおにぎりをアルノおじいちゃんと半分こにして食べた。遠くから滝の音が聞こえて、桜の花びらがまた一枚、池に落ちた。


その人が来たのは、そんな穏やかな時間の後だった。
どこからともなく現れた。その人はとっても目立つ。ロングヘア、スラリとした感じ。白いコットンのシャツと淡いベージュ色のパンツ、薄いカーキ色のロングコートを羽織っている。足元は白のスニーカー。かっこいい。そして眩しい。ミサちゃんの憧れ。
花見客の流れの中にいるのに、その人だけ違う層にいるみたいで、周りの誰も気づいていない。いつもとは違って顔が真剣。ニコリともしない。まっすぐ、拝殿の方へ向かって歩いていた。
その人はみさちゃんを見た。一瞬だけ。私がそこにいることを、最初から知っていたようだった。
でも足は止まらなかった。今日は、もっと大きな何かがある。みさちゃんにはそれがわかった。英霊たちも、さっきまでのニコニコをすっとおさめて、背筋を伸ばした。
私たちはその人の後について行く。


その人は拝殿の前で、頭を垂れた。
動かない。ただ、祈っている。
でもみさちゃんには見えた。その人のすぐ上の辺りに、何かがいる。私たちがミイちゃんと呼んでいる存在だ。いつもそこにいるミイちゃんが、今日は少しずつ大きくなっていった。その人の体から離れるように、ゆっくりと、でも確実に。どんどん大きくなった。その人より、拝殿より、靖国の境内よりずっと大きく。空へ、空へと舞い上がっていった。
ミイちゃんは光でできた女性の姿だった。有無を言わせない、圧倒的な力があった。研ぎ澄まされていて、ノイズがひとつもない。その存在の前では、余計なものが全て、黙るしかなかった。
英霊さんたちが、一斉に敬礼した。


しばらくして、みさちゃんは気がついた。自分がいつの間にか、目を閉じていたことに。
心の目で見ていた。空を。
祈りの場所の中心に、光の玉が生まれていた。小さな光がじわじわと広がって膨らんでいく。やがて弾けた。パカーンと。爆発じゃない。静かに。しかし圧倒的な力で解き放たれた。
光は上へ向かった。白く、太く、勢いよく真っ直ぐに。光の柱が、拝殿の中心から天へ向かって伸びていった。するとミサちゃんの目に、日本中の護国神社から同じ光が立ち上がるのが見えた。一本、二本、三本——数えきれないくらい。日本の大地に、無数の光の柱が立っていく。
上から見た。
日本列島が、輝いていた。大地に無数の光の柱。上空にも光の層。大地と空が光でサンドされた二重層。暗闇の中から、ネオンとは違う、本物の光がまばゆいくらいに輝いていた。
よかった。これが日本を守る。


そのとき、白い軍服の兵隊さんたちが現れた。
五人だった。手をつないで輪になっている。みんな光の柱と同じ色でニコニコしていた。パラシュートの逆みたいに、下から上へふわりと浮かんで上に上に押し上げられていく。拝殿の屋根の5倍くらいの高さのところで、光の柱にピタッとくっついて、中にすっと入った。そのままスーッと上がっていく。宇宙の根源へ、還っていくのだとわかった。
みさちゃんの視点が、光の柱のその入口のちょっと上ぐらいに移動した。
そこから下を見ると、軍人さんたちが列をなして待っていた。たくさんの人たち。みんな嬉しそうだった。順番に輪になって、光の柱の中に入っていく。次々に、次々に。
よかったね、とミサちゃんは思った。


英霊さんたちが次々に光の中に消えていくのを見ながら、ミサちゃんはふと不安になった。
みんないなくなったら、この神社はどうなるんだろう。日本は、どうなっちゃうんだろう。
言葉にする前に、ミイちゃんの声がした。
「大丈夫。彼らはいつでもここに戻ってこれる。光として」
「みさちゃん、さっきあなたがやってくれたでしょ。愛以外のものすべて浄化。あらゆる思念を浄化——あなたがやったんだよ」
みさちゃんは知らなかった。ただそこにいて、ただあの人と同じように祈っていた。それだけだった。
「心の目で見て、空を」
その声が聞こえた時には、みさちゃんはアルノおじいちゃんの隣に戻っていた。空を見上げると、ミイちゃんはもういない。


頭を垂れたまま、その人は動かなかった。
でもみさちゃんにはわかっている。その人は全部感じているって。ミイちゃんが何をしているか、頭を下げながらその人は全部知っているって。
やがてミイちゃんが、静かにその人の中に戻っていくのが見えた。また、普通の女の人になった。少しして顔を上げ、振り返らずに来た道を戻っていった。花見客の流れの中に、消えていった。


アルノおじいちゃんが、静かに言った。
「見えたか」
みさちゃんはこくんと頷いた。
「あの人は、誰?」
おじいちゃんは少し笑った。答えなかった。でも、その目が言っていた。
それを知っているのは、わしだけじゃよ。

帰り道、みさちゃんの背筋はまっすぐだった。ピンと、自然に伸びていた。頑張って伸ばしたんじゃない。余計なものが全部、なくなっていた。
あの兵隊さんたちの背筋も、きっとこんなふうだったんだと思った。
境内にはまだたくさんの人がいた。桜の写真を撮って、笑って歩いていた。
誰も、私たちが見たことに気づいていなかった。

この記事を書いた理由
命をかけて、この国を守ろうとした人たちがいる。
清らかな魂を持った人たちと繋がる場所が、靖国神社にはある。
みさちゃんがやったことは、特別なことじゃない。
誰もが祈りの力を持っている。
でも、その祈りの純度が高いほど、届く場所が違う。
あなたの祈りも、ちゃんと届いている

祈りの力は、誰にでもある。
でも、ノイズが邪魔すると、その祈りは届きにくくなる。
ノイズを取れば、祈りの純度が変わる。
届く場所が変わる。
ノイズを取れば、人は勝手に最強になる。
あなたの祈りを、もっと遠くへ届けませんか。

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