犬みたいにブルブルした日― コードという名の鎖 第9話 ―
エンパスの体は、コードが切れた瞬間を知っている
ワンちゃんはなぜ、ブルブルっと震えるのだろう。
実は私もワンちゃんするのである。
しかも、自分でやろうとしてやったんじゃない。
体が、勝手にやっている。

コードは、朝からあった
家を出る前から、何かがいた。
美沙の頭が、少し重かった。歪んでいる、という感じ。
でも何かが、空気に混じっていた。
痛いと言えば痛い。点のように小さく。
美沙は考えなかった。
外に出て、バス停に向かいながら、もうそのことは忘れていた。
頭の中は鮫洲に行くことだけ。免許の更新。
美沙はよく言われる。グラウンディング不足、と。
遅刻がち、迷子、忘れ物、落とし物——地に足がついていない。
真っ当と思われている地球人、日本人に助けられ生きている。
しかし、「まあ、お互いさま」とメッセージが来た。
素直に受け取ることが、優しさ
電車待ちのカフェに入った。
その証拠に——目の前におばあちゃんがひとり、とっても小柄。
バッグに何かを入れるのに苦戦しているではないか。
美沙はすぐに「手伝います?」と声をかける。
「ハイ」
ちょっと手伝う。
このおばあちゃん、素直にハイと言えるんだから、上質な人。
だって、ありがちな「悪いねぇ」「ごめんなさい」とかじゃない。
人の好意は素直に受け入れる。それが優しさ。
これは死んだ親友に教えられたこと。
それに、ノイズクリアをしたおかげで、ふと目に入った瞬間から美沙は動けるようになった。
楽だ。
以前は声かけちゃ悪いかな?余計なお世話かな?と迷っていたもの。
なんと楽なことか。余計な脳ミソは使わなくていい。
鈍色が、頭の中を覆い尽くしていく
電車に乗った。
鮫洲へ向かいながら、美沙は出発時の点が広がっていることに気付いた。
じわじわと、鈍色に染まるように、頭の中を覆い尽くしていく。
名前はわかっていた。職場の、あのふたり。
そばにいるわけじゃない。
でも繋がっていた。
コードは、電車にも乗ってくる。
ここまで広がってしまった時は、美沙は仕方なく痛み止めのお世話になる。頭痛持ちの人は早めに飲むらしい。
でも美沙はなるべく薬に頼りたくない。だから薬を飲む前にやることがある。
まず、美沙は痛みのある方向の身体から30cmくらい先に手を置く。
手のひらを外側に向ける。甲が自分側。
「頭痛よ、来るな」という気持ちで。
次に痛い箇所を触り、呪文を唱える。
「ちちんぷいぷい いたいのいたいのとんでいけー」
笑われそうであるが、日本人なら誰しもこの呪文のお世話になっているのではないか。
江戸時代からの民間療法らしい。
医学的にも痛みを緩和させる効果が証明できるという。
時と場合が許せば、首と頭のマッサージとストレッチも。
殺風景な講習室で、バレエの首筋
青物横丁駅で美沙は降り、商店街をのんびり歩く。
天気の良い休日。趣のある小さな店構え、古い建物の間を通り抜ける。散歩するのにいい街並み。
しばらく歩くと開放感が感じられる。
海岸通り沿いにあたり、すぐに鮫洲運転試験場に到着。
美沙の頭の中は、まだ鈍色だった。
講習室の椅子に座ったまま、美沙はそっと首を傾けた。
右へ、ゆっくり。じわーっと、重力に委ねるように。
蛍光灯の白い光。プラスチックの椅子。
前の席のおじさんの、少し丸まった背中。スクリーンには「安全運転のために」という文字。
美沙の首は、静かに弧を描いていた。
左へ、じわーっと。
バレエで鍛えた首筋が、滑らかに伸びる。
美沙は息を吐きながら、肩をゆっくり落とす。
ふぅー。
殺風景な講習室の中で、美沙ひとりだけ、違う時間が流れていた。
新宿の隠れ家カフェで、ブルっ
無事、更新を終えて、美沙は新宿に向かう。
隠れ家カフェ。いつもの場所。
美沙は目を閉じた。呼吸を整える。
自分の内側に入って、波動を上げる。
始めた直後に、お局の上半身がちらりと見えた。
なんだ、お局かあ。覆いかぶさっていたのは。朝からね。
その瞬間だった。
ブルっ。
美沙の全身が、一瞬、激しく震えた。
背中から肩にかけて、何かが抜けていくような感覚。
頭も振っていた。意識してやったのではない。体が勝手に動いた。
「おー。ワンちゃんしちゃった。」
美沙はにっこり笑った。
視界が、すっと明るくなった。呼吸も、深くなった。楽だわ。
カーミングシグナル
美沙はよくワンちゃんする。自然にブルブルっと震える。何か祓った証拠だと思ってた。
後で調べた。
犬がブルブルするのは「カーミングシグナル」と呼ばれる反応だという。
緊張が終わった後、ストレスを振り払いたい時、興奮が収まってリラックスに戻る時
——体が自動的に震えてリセットする。
ひっつく前じゃない。何かが終わった後に、ブルブルする。
美沙はその時に祓っていると思っていた。
しかし、瞑想や何気なく受けてしまったとき、すでに祓いは発動していて、
ブルブルっは祓い終わったサインだったのかもしれない。
体が、ちゃんと知っていた。コードが切れた瞬間を。不要なものが離れた瞬間を。
思考より先に、言葉より先に、体は魂の声を受け取っている。
コードは、距離を選ばない。そばにいなくても繋がっている。
視界が本来の状態に戻る。呼吸が本来の状態に戻る。
そして体が「大丈夫だよ」とサインを送る。
美沙はブログを書いてる今、ワンちゃんした。
つまり、「ちゃんと書けたよ」というサインが来たということね。
身体って最高、ありがとう。
あなたの素晴らしい身体にも「ブラボー」
📖 次話、乞うご期待
📖 第1話から読む
【この話のまとめ】
コードは距離を選ばない。離れていても、電車にも、どこにいても繋がり続ける。
しかし体は、コードが切れた瞬間をちゃんと知っている。
ブルブルっと震えるのは、祓っているサインじゃない。
祓い終わったサインだ。
体は、魂の一番正直な翻訳者だ。
📖 第10話へ → ここには下手なコードが届かない
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コードを切りたい方、ノイズを消したい方、ai美のセッションへどうぞ。
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あなたの魂は、最初から美しい。ai美はそれを知っています。

