神さまの涙をもらった日|小野神社・瀬織津姫に魂を浄化された日
呼ばれた日
その日の朝まで、美沙は別の神社へ行くつもりでいた。
何度も訪れたことのある、行きつけの場所。その日もそこへ行こうと思っていたはずだった。
でも、なぜか気がついたら、全く別の方向へ向かっていた。
東京都多摩市にある、一度も訪れたことのない神社へ。
武蔵国一之宮、小野神社。創建2500年以上の古社だ。
自分でも不思議だった。特に調べたわけでもなく、誰かに勧められたわけでもない。それなのに、足が自然とそちらへ向いていた。
後になって思う。あれは自分の意志ではなかったのかもしれない、と。

四月の境内で
小野神社のベンチに、みさちゃんとアルノおじいちゃんが並んで腰掛けていた。みさちゃんは足をブラブラさせながら、おじいちゃんと話をしている。
四月の上旬なのに、とても暖かい日だった。桜はもう終わっていたけれど、木々の黄緑色がやわらかく光っていた。
見上げると、青空。その青は、ただの青ではない。透明感があって、いろんな色が混ざり合っているような、クリアで深い青だった。そこに、朱色の社殿。
自然が何千年もかけて作り出したものと、人間が何百年も大切に守り続けてきたもの。そのコントラストが、静かに美しかった。
「みさちゃん、なんでここに神様がいると思う?」
アルノおじいちゃんが聞いた。みさちゃんは少し考えてから、きょろきょろと境内を見渡した。
「きっとね、神様がここが好きなんだよ。」
「なんで好きなんだろうね。」
またしばらく考えて、みさちゃんは答えた。
「きっとね、宮司さんが優しい人なんだよ。それにね、ここに来る人たちって、みんな優しい顔してるでしょ。」
「そうだね、みんな優しい顔してるよね。」
「神様はね、優しい人が好きなんだよ。」
アルノおじいちゃんは、ふふっと笑った。「そうかもしれないね。」
そのとき、鳥居の方に、あの人が見えた。
鳥居をくぐったとき
その人は鳥居をくぐって一礼した後、なかなか顔を上げずにいる。
涙が溢れ、ポトンと地面に落ちた。その人はリュックからティッシュを取り出すが、それが追いつかないくらい涙が流れている。
どうしたんだろう。
みさちゃんは顔をかしげ、じっと見た。その人はみさちゃんを見て一瞬だけ微笑んだけど、またすぐ泣いて社殿に向かって歩き出した。
その人の名前は美沙。
美沙は鳥居をくぐった瞬間、声が聞こえた。
「待っていましたよ。よく来てくれましたね。あなたの輝きは、上から見るとすぐに分かるのです。本当にキラキラしていて、とても目立つ。あなたがここに来てくれることは、私たちにとっても大きな喜びであり、名誉なのですよ。」
神さまの声だった。
美沙は動けなかった。感動と感謝が一度に押し寄せて、涙が止まらなかった。

三柱の神様
神社に着いてすぐ、不思議なことが起きた。
これまでたくさんの神社を訪れてきたけれど、いつもは御祭神のお名前をそれほど気にすることはなかった。でもここでは違った。
「この神社にいらっしゃる神様は、どなたなのだろう。」
自然とそんな気持ちが湧いてきて、気がつくとパンフレットに手を伸ばしていた。
天下春大神(あめのしたはるのおおかみ)。瀬織津比咩大神(せおりつひめのおおかみ)。稲倉魂大神(いなくらたまのおおかみ)。
三柱の神様のお名前を、美沙はゆっくりと読んだ。
瀬織津比咩大神……祓いと浄化の神様だ。罪や穢れを川に流し、海に流し、宇宙へと還す力を持つとされている。
あれほど涙が止まらなかったのは、もしかしたら瀬織津比咩大神が私の魂についた曇りを、涙とともにそっと流してくださっていたからかもしれない。
神さまの御前で
美沙はゆっくりと社殿に向かって歩いた。白いコットンのカットソー。紺色のジャージパンツ。グレーのスニーカー。ロングヘアをそのまま下ろして、化粧っ気はない。その足取りは静かで、でもどこか迷いがなかった。
社殿の前に立ち、鈴を鳴らした。そっとお賽銭を入れて、手を合わせた。
お願い事はしない。
「天下春大神様、瀬織津比咩大神様。この地にお招きいただきありがとうございます。私は愛されています。幸せです。私もあなた様が大好きです。」
また涙が溢れてきた。ハートが熱くなっている。じんわりと、内側から広がるような温かさだった。
宇宙へ
端に移動し祈っていると、瞑想状態に入った。
静かに意識を上げていく。高く、高く。
すると、神社全体のエネルギーが美沙を包み込み、そのまま宇宙の方へとどこまでも押し上げてくれるような感覚が訪れた。
地に足がついているのに、魂だけがどこまでも高く昇っていくような……
神様の声が聞こえる。「あなたはもっと高いところへ行けますよ」
更に涙が溢れてくる。
5分程度だったかもしれない。しかし、美沙には30分ぐらい宇宙にいたような至福の時間だった。
子どもの声が聞こえて、ゆっくりと目を開けた。
宇宙まで押し上げられるような深い体験の余韻の中で、振り返った。
そこには、静かに参拝する人たちの姿があった。派手でもなく、騒がしくもなく。ただ静かに、丁寧に手を合わせている人たち。知的で、品があって、どこか内側から光が滲み出ているような方々だった。
「ああ、この神社に来る人たちは、みんな何かを感じてここに来ているんだ。」
そう思った瞬間、また静かに胸が熱くなった。

あの涙は
美沙を興味深く見ていたみさちゃんは、アルノおじいちゃんに尋ねた。
「神さまにあのお姉さん泣かされたの?」
「逆かもしれないよ。あのお姉さんが神さまを泣かせたんだ。」
「どうして?」
「神さまの涙があのお姉さんに移ったかもしれないね。」
「みさちゃんはどんな時に泣くの?」
「みさは泣かないよ。」
「そうだったね。みさちゃんはガマンするものね。涙はね、いいことでもあるんだよ。大人はね、うれしくて、心が震えて泣くこともあるんだ。」
「神さまも?」
「そうだね。」
アルノおじいちゃんも、細い目が涙でうるうるしている。
長い時間、ひたすら人々を見守り続けてきた神様。その中でも「ようやく来てくれた」と感じさせる美沙。その溢れるほどの感謝と喜びが、美沙という器を通して、涙となって流れ出てきたのではないか。
胸の奥がじんわりと温かくなり、みさちゃんまでも涙が溢れてきた。
なぜ私なのだろう、と美沙は考えた。
私だけではないだろう。
例えばあのベンチに座っているおじいちゃんと女の子だって輝いて見える。
あのベンチの二人が、ずっと見ていたようだ。泣いて祈る不思議な私を。でも、あの二人は、わかっているような気がする。
神さまから私たちを見たとき、何によって輝いて見えるのだろう。
容姿でもない。成功でもない。徳の高さ?
もちろん徳が高い方がいいに決まっている。だけど、何か違う気がする。
「神さま、私はどんな存在?」
「自分でわかっているでしょ。純粋であるほど、曇りなく、はっきりと見える。」
スピリチュアルの世界では、曇りをノイズと呼ぶことがある。過去の傷。他人の評価への執着。本当の自分とは違う役割を演じ続ける疲れ。そういったものが積み重なるほど、本来持っている光は見えにくくなっていく。
逆に言えば、ノイズが減るほど、魂の輝きはそのままあふれ出してくる。
美沙はそれを、この場所で感じていた。ノイズクリアに取り組んできたことを、神様方はちゃんと分かってくださっている。
それはそうと、あのベンチの女の子、小さいときの私に似た空気がある。
あなたの光も
本当に光って見える人には、共通する空気がある。
自分を大きく見せようとしない。でも、その場にいるだけで、なぜか周りがふっと明るくなる。ニコニコしていて、どこか楽しそうで、一緒にいると心が軽くなる。
威圧感のある"すごみ"ではない。やわらかな明るさ。
それは、内側が澄んでいる人が自然に放つ光だと思っている。
あなたの光も、澄んでいます。輝いています。
ただ、本当に輝いているのだろうかと気になる方は、ぜひセッションにお越しください。 https://aimi-8888.com
📍 武蔵国一之宮 小野神社 東京都多摩市一ノ宮1-18-8 京王線「聖蹟桜ヶ丘駅」西口より徒歩約7分

